ITと哲学と

IT系エンジニアによる技術と哲学のお話。

ストーリーとしての競争戦略を読んだ

職場で話題になっていたので、ストーリーとしての競争戦略を読んだ。

読書後の感想

共感できたところについては、至極真っ当なことを言っているというか、当たり前だよねーと思う部分が多かった。

一方で、冗長な部分が多いと感じた。 話が長いことにも意味があるとしているが、共感はできなかった。

読みやすさへの工夫は感じなかった。もっとリッチに図解するとか箇条書きでポイント示すなどあってもよいのでは。 初めの方は全体像が示されないでストーリーについての主張が始まるので、??という感じだった。

かなり前提条件の上で成り立つよねこれ?という感じで、途中で説明が出てくるまでは素直に読めなかった。

各打ち手が有機的に繋がって、各打ち手がストーリーとして動画的に成り立つものでないといけないという主張で、これ自体は納得感が強い。

が、タイトルが無意味にポップでキャッチーに思う。 内容理解の助けにはならないので、有機的に各項目が繋がって相互作用を起こしながら持続可能な利益を産む構造を作りましょうっていう普通の説明で良いと思った。

勝手に受け取った印象として、ストーリーという言葉は煌びやかな感じがしてて。ストーリーが大事だ!という言葉の奥にある有機的な項目の繋がりって本質が、見えにくくなると思った。

読書メモ

第一章

論理化とは事例を抽象化する行為である。 論理は抽象化されたものなので、自分たちのビジネスに取り込むには、自分たちのコンテキストに合わせて調整してあげる必要がある。 これはすごく真っ当で、ここが一番この本で良い点だと感じた。

テンプレートや既存の道具立ての否定的な表現が続くが、それはあくまで使い方の問題であり、道具がもつ本質的な問題ではないと感じた。 問題ってそこなんだっけ?となってしまった。

日本企業にとってストーリーで戦略を語るのは大切という話は理解できた。 ただ、これは日本の終身雇用の雇用形態が関わっており、今後もこの論理が通じるかは不透明に思う。

ストーリーを語ることは「意思表示」であって、未来予測ではない。 意思表示という点は共感する。

第二章

大前提として競争戦略と全社戦略は別物。

どこで戦うべきか?を考えるのは全社戦略。戦う場所が決まっていて、競合も見えている状況から考えるのが競争戦略。 ここを混同して扱うと変なことになるので注意が必要。

基本的にはシュンペーター型の競争環境において、ポジショニングもケイパビリティーも大事だよね。というお話。まあそうだよねそれは知ってたって感じ。 なので、競争環境によって、この議論が通用するかしないかは違うはず。 (page 138)でそれっぽいことが言われている。OCはSPの持続性に懐疑的な立場をとるというくだり

ストーリーの最終目標が持続可能な長期的利益と言っているのがまずややこしい。 持続可能な長期的な利益とか、シュンペータ型の競争環境においては目指すべきものではなくて、その瞬間瞬間で判断して、細かい勝利を繰り返していく必要がある競争環境であるはずである。 この本で言いたい持続可能な長期的利益というのはそういうレイヤーの話ではなくて、変化に対応していく能力自体を獲得しましょうとかそういうメタな話を含むものだと思う。

気合を「大切にする」と「依存する」は大きく意味が異なる。(page 108) これはほんとその通りで、いいこと言ったと思う。

第三章

ストーリーは業界の競争構造、ポジショニング、組織能力に続く、4つ目のもの。 やっぱりこういう位置付けでのお話だよな。 この話が最初にあればもう少し飲み込みやすかった。

ストーリは因果関係の強さや、因果関係の多さ、発展性などが大事。

あくまで事業の最初からストーリができている必要はなくて、活動の中で組み上がっていくものである。 それはそうだと思うけど、じゃあ実務的にどうしたらいいんや。この本から何を学びとれば良いのか?即物的なものを求めすぎているとは思うが、投げっぱなしもよくないと思うけどなぁ。。

ストーリーのゴールは長期的な利益とあるが、それってほんまに? 全社戦略レベルであればそうかもしれないけど、ここの事業レベルでこれが成り立つかは不明。 社会貢献活動とかもあるやんという感想。

第四章

単にモノを売っているわけではなくて、ほんとのところ、誰に何を売っているのか?が大切。 これをすると、誰がなぜ喜ぶのか?という視点。 これはほんとその通りだと思う。ジョブ理論で言ってることにも近しいかな。

(page 248)なぜ?がストーリーにとって一番大切。 わかりにくいけど、これが一番大事なのではこの本で。

第五章

クリティカルコア:ストーリーの一貫性の基盤となる、持続的な利益の源となる中核的な要素。 他の要素とたくさんの繋がりを持ち、一見して非合理に見えるもの。らしい。

非合理な要素なので、競合他社がこの部分だけを真似しても、効率が落ちて自滅していくような類のもの。 非合理を組み込んで、いかに全体としては合理的なストーリに仕立て上げるか?がポイント。

うーん。。。そんなものがあればいいんだけどなぁ。。それはどうやって見つけたらいいの?言ってることはそうなんだろうけど、示唆がない。 それできたら苦労しないよね感。

具体的な事例研究

についてはもう読み流すでいいかな。

スタバの例とか上がってたけど、最近のスタバには当てはまらないこともあった。 忙しい人にはスタバは嫌われる選択をして、それが全体的には合理的なんだみたいな発想なんだけど、スタバ、新大阪の駅構内にあるし、そのお店はテイクアウトが主流。 3rdPlaceとは?ってなるかな。